ゲストBOOK

 

モザンビーク





その時、カンカンカンというインストラクターからの音が聞こえた。
「注意して・注目して」という時に、
ダイビングインストラクターは自分のボンベを棒で叩いて僕らに知らせる。
これは来たか!と思った!
前を見ると、ゆうに6〜7mはあるかと思われる巨大なマンタが目前に現れたではないか!
大きい!!
見たこともないくらい本当に大きい!まるでスターウォーズに出てくる戦艦のようだ。
でも生き物。ゆっくりと水の中を飛んでいる...。
こんなに不思議で大きな生き物が海の中には本当にいるんだ...。
マンタの動いていく方に目をやると、なんともう一匹が現れ、仲良く一緒に並んで泳ぎ、
また消えていくのを僕らは見守った。
ここは水深28mの世界。

今日は他にもジンベイザメを見た。あのジンベイザメである。世界一巨大なサカナである。あのダイバーにとっての憧れのアレである。これはダイビングをする前に偶然出会い、
「みんな急いでシュノーケリング装備を付けろ!」
とインストラクターの言われるがままに、マスクとフィンだけ付けて海に飛び込むと、
目の前に茶色に斑点のあるジンベイザメがいた!デカい!!
ジンベイザメの中では小さい方ではあったが、それでもゆうに7〜8mはあったと思う。
僕は、ダイビングをする前にシュノーケリングで力を使い果たしてしまって、
具合が悪くなるとイヤだと思ったので、少しだけ見てすぐボートに上がった。
ここトーフビーチのダイビングは、動力の付いたデカいゴムボートで海に出かける。
ゴムボートにしては大きいが、舟にしてはスゴく小さい。
シュノーケリングにしてもダイビングにしても、海から上がるのは一苦労である。

そしてダイビング!
ネガティブエントリーという、後ろ向きで頭から海に飛び込んでそのまま一気に海底まで行くという方法は、まだまだダイビング初心者の僕には慣れてもいなく、怖くもあるのだが、インストラクターに助けられ、なんとか潜行できた。
そして今日は海がこれまでになく穏やかだったのが幸運だった。
前回やった時はボートでポイントまでに行くまでに船酔いでフラフラだった。
それもあって、今日リエが一緒に潜っていないのが悔しい。それくらい前回は辛かった。
しかし今回は、前のように潮の流れなんか全然キツくなかったし、
美しいサカナも山ほどいた。
黄色の小さいサカナの大群もいたし、ウマそうなロブスターもいた。
大きなライオンフィッシュも優雅に泳いでいたし、
岩陰にアフリカンサイズの大きなフグもいた。
ダハブの時のようにいろんな種類のサカナを見た気がする。
そして、マンタたち!!

マンタは僕らの前をゆっくり大きな円を描くように泳いでいる。
僕らダイバーはその様子を、岩辺に掴まって静かに見守った。
僕はウマいこと岩に掴まることが出来ずマゴマゴしていたが、やっとのことで掴めた。
本当に大きい...。ゆっくりと水の中を飛んでいる。
遠くに行ってしまわないで、と思った。
お前に会いにアフリカまで来たんだ、と思った。
すると、願いが通じたのか、マンタはゆっくりと僕の方に近づいて、
すれすれ50cmくらいのところを通り抜けていってくれたのだ!本当に大きかった...。
でも優しい顔をしていたのだ。
ゲージを見ると、僕のエアーの残量が50をきっていることに気がついた。
タンク満タンの四分の一以下しかない。
インストラクターに知らせると「上がろう」の合図をした。もっといたいが仕方がない。
今日は本当にサイコーのダイビングだった...。
ここはディープダイビングなので、ゆっくりと皆で浮上する。
僕は浮上する途中でエアーの残量が20をきってしまい、
安全停止の最中にインストラクターのエアーを分けてもらうはめになってしまった。
反省である。
安全停止の時間は長く感じる。
もうすぐそこにある水面からはキラキラと外の世界が見える。

そのとき「ほらあそこ」とインストラクターが水底の方を指した。
見ると、チラッとマンタのヤツが見えた!
ニコッと笑ってくれたように見えた。

「また遊ぼうよ」

そう言ってくれたような気がした。水面にはボートが迎えに来てくれている。
そして帰り道、僕らはまたしてもジンベイザメにも出会った。
例のごとくシュノーケリングの装備を付けて海に飛び込む。
飛び込んだところにあのカオがあった!
あとは帰るだけなので、僕は思う存分一緒に泳ぐことが出来た。また会えてうれしいよ!
それにしてもなんていいダイビングだったのだろうか。明日も潜る予定だ。
明日はリエも潜ることになっている。また会えたらいいな!

(リョウスケ)



   
   
 


今日はリエと二人でマプトの町を歩きまわる。
昨日僕らはトーフからモザンビークの首都、マプトに着いた。
まず明日、南アフリカのダーバンへ行くためのバスを手配しに駅まで行き、
そのあとマーケットの中を歩いて見学して、美術館へも行き、
その足でレボリューション博物館も行った。
しかし、マーケットにいるあたりから雨がザアザアと降り出した。
ホテルから町の中心までは歩いて結構かかるし、ダーバン行きのバスが木曜日の明日しか
出ないこともあってマプトを見学できるのが今日しかなく、無理をした。

レボリューション博物館からホテルまでは二人でずぶ濡れになって帰った。
やっとたどり着いた宿、僕は体がものすごくしんどくなっていくのがわかる。
夕食を早々にすませ、明日のバスが早いこともあるし7時頃だったがもう寝ることにした。
しかし、寝れなかった。寒いのだ。
持っている服を全て着ているが、口がガクガクするほど寒い。
そして、起きあがることができないほど体がしんどい。
今リエの右手はダイビングの時捻挫して、触れるだけで激痛が走るほど痛がっている。
だから二段ベッドの上段に僕が寝ている。
今日なんてさっきまで僕がリエのヘルパーだった。
しかし、今の自分はどうしようもなく死にそうに寒い。
リエを困らせたくなかったが、僕は下の段で本を読んでいるリエに助けを求めた。
「...あのさぁ、リエ、寒くて、死にそうなんだけど、どうしよ...」
「うわっ!すごい熱!!」
起きあがったリエは、痛くない方の手で僕の熱をみてビックリしていた。
ジンバブエからずっと一緒に旅をしているユースケさんも僕の高熱に驚き、
ホテルの人に頼み、毛布をたくさん持ってきてくれた。
ありがとう...。
僕はグルグル捲きの蓑虫のようにして寝ることになった。
そのあと寒さはおさまり、少し落ち着いたが、高熱で汗がものすごく出てくる。
夜中、息ができないほど苦しくハァハァと呼吸もしんどくなった。マジで死にそうだ...。

明日のバス移動のためにと二人で買った水ももう全部飲んでしまった。
しかも明日南アフリカに入る予定だったので、
モザンビークのお金はきれいに使ってしまってもうない。
そんな中リエは、僕が記念にとっておいたモザンビークのコインを探し出し、
どこからかコーラを買ってきてくれ、僕に飲ませてくれた。
これが最後のコーラだ。天の助けだった。
そして、外はもう夜中、もう水を買いに行くことはできない。
リエはきれいな水を手に入れるためにキッチンに湯を沸かしに走ってくれた。
その湯を冷ましている間に水道水でタオルを濡らし、僕の額においてくれた。
それを一晩中、リエは黙って何度も何度も繰り返してくれた。
リエは右手が使えないくらい痛いはずなのに、
何度も何度もタオルを絞って取り替えてくれた。
とにかく、へんな病気でないことを願いたい。
風邪の症状とマラリアの症状はものすごく似ている。
アフリカでは常にマラリアを疑わなければならない。
リエも同じ事を考えていて、ずっと「明日病院へ行こう」と言っていた。

翌日、ケロッとまではいかないがなんとか動ける感じになることができた。
リエのおかげである。これが夫婦愛なんだと思った。大感謝である。
これからは南アフリカ、道路も整っているし、バスも日本並みだときく。
これがケニアやタンザニアのような移動だったら先延ばしにするところだったけど、
思い切って予定通りのバスに乗ることにした。
きっと南アフリカの方が医療設備も整っているはずだ。
アフリカの旅も4ヶ月を越え、かなり疲労がたまっている。
それに加えて大雨の中かなりの距離を歩いたのがたたったのだろうと思う。

それにしてもリエは強い。
僕と同じように旅してるのに、最近は風邪などまったく引かない。
右手の捻挫だけはかわいそうだが...。
しかし男性より女性のが強い、というのは認めざるをえないようだ。アフリカに来て思う。
そんな強いリエに感謝して、僕らは最後の国、南アフリカに向けて旅立ったのだった。

(リョウスケ)

 




旅の日記 | ROUTE | VIEW | PEOPLE | キムラ夫婦 | MEMO | リンク集 | ゲストBOOK  to TOP  
copyright: kimurafufu.com 2006