西安から成都までの列車にやっとのことで乗り込んだが、
しばらくの間、僕ら二人はかなりイライラしていた。
「あーーームカつく!私もう寝る!」
ついにリエの堪忍袋が切れてしまったようだ。
つい数時間前まで、ユースホステルで仲良くなったアメリカ人と
卓球なんぞ楽しんでいた僕らは、もちろんケンカなどしていない。
イライラの原因は、この列車に乗っている人々にあった。
中国では、僕ら日本人が持っているような、いわゆる「常識」は通用しない。
列での順番抜かしは「抜かされる方が悪い」という考え方がここでは常識なのだ。
「郷に入れば...」にならい、僕らも負けずと人々をかき分けて、
自分たちの乗る列車のホームまでやっとこさたどり着き、列車に乗った。
二人ともそんなことでイライラしていたのではない。
やっと乗ったこの列車、一つの車両につき3段ベッドの向かい合わせが10組ずつ、
つまり60名が乗っているので結構な人口密度の寝台列車。
おっと、隣のおっちゃん集団、白酒大宴会始まっちゃったね。
いいじゃん、楽しそうじゃん。スゲー白酒臭いけど、まぁいいや。
僕らの合わせベッドは高校生くらいの若者軍団。
僕らのベッドから、キミらのの荷物をどかしてさえくれれば全然OK。
二人とも、そんなことでイライラしていたのではない。
西安から成都までの12時間の寝台列車移動、当然腹も減る。
だからみんなスゴい量の食料を持ち込んでいる。こんなに食いきれるのか?
そしてびっくりしたのは、この人たち、自分たちの食べた食いカスを
窓からポンポン捨てるのだ!ほんとにポンポン捨てる。
しかも食いカスといっても、ペットボトルやカップラーメンを汁ごと、とかである。
お父さんもお母さんもおじいもこどもも全員で次々に捨てる。行儀もなにもない。
蒸し暑い電車の中、窓を開けて座っていると捨てたラーメンの汁が軽く顔に飛んできた。
これには地球に優しい僕ら、我慢できなかった!
あげくの果ては、ビールの瓶まで投げ捨てている。いいのか?!
両サイドからガシャンガシャンバリンバリン聞こえてくる。
子供もおもしろがって、大はしゃぎで無駄にバシバシ捨てている。
電車は時速100km近くで走行中。
もはや地球に優しくとか、そういう問題じゃない。フツーにあぶねー。
そうこうしているうちにふと見ると、イチャついていた若者カップルの男が脱ぎだした。
タオルケットの隙間から何も着ていない女の子の背中が見える。
周りは人だらけの大宴会場。まったく、欧米人もびっくりの大胆さだ。
もう、何でもアリだぜこの列車。
ねぇあれ見てよと、3段ベッド最上部にいるリエに知らせようとしたが
そういえばリエは怒って先に寝てしまっていた。
しかしこの列車、消灯したというのに笑い声が絶えない。なんか修学旅行みたいだな。
そう考えると、ハッピーな列車だ。
乗っている中国人同士、きっと知り合いではないだろう。
本当のことを言うと、僕はこれまでの旅で、中国人は実はいい人が多いと感じている。
運がいいだけなのかもしれないが、これまで何度もかなり親切にしてもらっている。
いやしかし!
世界でも人口の最多な中国の人たち!
もっとマジに地球のことを考えてほしい。
これは実は、地球レベルでかなり緊迫した問題なのではないだろうか...。
(リョウスケ)
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