ついに昨日は、実に5日ぶりにホテルのベッドで寝ることができた。
ホテル代を浮かせるためにギリシアのアテネでの2泊以来、宿泊は全てフェリーの中だった。
あの最高に素晴らしかったコルフ島から、
また夜を徹してフェリーでイタリアのバーリに着き、
朝一番でアルベロベッロを見学してから、僕らは一気にナポリまで来た。
昨日の夜、ナポリの駅からこのユースホステルの門に向かう間は、
マラソン選手がゴール手前の100mを走る気分はこんなものかもしれないと思った。
疲れ果て、ハラペコの僕らにとっては、丘の上にある門までは遠かった。
十分な時間とお金がないと、ヨーロッパの旅はインドなんかよりハードだ。
ナポリ!
イタリアといえば、パスタ、ピッツァ、オシャレ...みたいな
イメージを持っていた僕らはけっこうな衝撃を受けた。
ここは中国か?!アフリカか?!
駅前周辺は出稼ぎに来たであろうアフリカ人たちがカラフルな服装でウロウロし、
しばらく歩くと、そこは漢字の看板もちらほら、中国の世界になっているではないか!
なんか旅の初めに戻ったみたい。
いろんな人種が集まっているところは危険度もあがる。
これまで出会ってきた人たちが「ナポリは危険よ」と口を揃えて言っていたのを思い出す。
確かに危険そうではあるかもしれないが、さんさんと照る明るい太陽と人々のこの活気は
インドのコルカタに初めて着いた日をも思い出す。ワクワクするぜ!
ナポリの街は、ただ歩いているだけでオモシロい。
路地に干される洗濯物やサッカーをしているこどもたち、
地中海で採れた魚介類を売っている魚屋さん、壁のラクガキ、美しい女性、オッサンたち、
中国でよく見た服や小物の出店を出している中国人たち......生活臭がプンプンする。
こぎれいな街のイメージを勝手に持っていた僕らは、
衝撃を受けつつも楽しんで歩いたのだった。
やはりナポリといえば、ここらでひとつ、
マルゲリータ(トマトとチーズのシンプルピッツァ)を食べねばならぬ!
昨日、疲れ果てて飯も食わずに寝てしまった僕らはハラペコだ!
近くの一件が休みだったので、僕らは少し戻ったところの店に入った。
本場のマルゲリータは、ぶっきらぼうな円で切られてもいなかった。
でも一口食べると、トロトロに溶けたチーズと、
この地中海の太陽をサンサンと浴びて育ったトマト、
そしてパンの微妙な焦げが混ざり合って、サイコーの味だった!
地元も人たちもビール片手にウマそうに食べている。
確かにこれはここでしか味わえない味だと思う。
トマトも赤とバジリコの緑、チーズの白というイタリアの国旗と同じ色の
シンプルでぶっきらぼうなこのピッツァは、庶民の安い食べ物だったのだ。
イタリアは本当にマイペースな国だと思う。
ウマいピッツァを食べて満足になった僕らは、
次にイタリアのオシャレの世界を見学すべく、ショップの多い通りへ出かけたのだが、
見事に全ての店のシャッターが降ろされていた。
今日は日曜日だからみ〜んなお休みなのだ。
見事に全て休み。
日本人の感覚で言えばなぜ日曜日に休みなのか理解できないかもだが、
とりあえず全て休み!
ピッツァを食べることができたのは幸運だったかもしれない。
イタリアでは、平日でも13時から17時まではほとんどの店は休み。
いつ買い物すればいいのやら。ていうか働いている時間はほとんど無いではないか!
働くことよりも、なんだかマイペースに楽しんで生きている感じだ。
電車の車掌さんなんかも、ズボンをオシャレに履きこなして、
ロンゲのパーマで、ピアス付けた姿で切符を切りにきたりするし。
海岸沿いを歩いてみる。
すると、海岸ではたくさんの人たちが寝そべって日光浴したり泳いだりしている。
なんだ、店じまいしてみんなここに集まっていたのか。
ピースな感じだ。これがイタリア人の生活スタイルか。
こどもの頃、不思議に思ったことがある。
日曜日に家族でデパートに行った時、
なぜデパートの店員さんは日曜日に働いているのだろう、と。
ナポリのこどもたちはそんなこと思わないだろう。
僕ら日本人も、もっと見習った方がいい感覚なのかもしれない。
しかし僕らは、あまりにもどこも開いていないので、
しかたなく宿に戻ったのだった。
(リョウスケ)
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