「あのおっちゃん、あんなとこで降ろされて大変やな」
建水で燕子洞というアジア最大の鍾乳洞へ向かうバスの中、
高速道路の脇で途中下車をするおっちゃんがいて、僕は驚いていた。
外は炎天下。
あの人は、こんな高速道路の途中からどこへ行くのだろう?
が、イヤな予感はリエのが先に感じていた。
よく観察すればわかったのだが、このバス、観光客らしき人は一人も乗っていない。
リエの予感は的中し、10分後、僕らも見事に高速道路のド真ん中で降ろされた。
「ちょうどそこに燕子洞のインターがあるから歩いてイケ」と運転手。
マジかよ。
「え?ていうか燕子洞はどっち?」と聞いても「あっち」と指差すだけ。
あっちにもこっちにも、モリモリと山が広がっているだけだ。
しかたなくバスを降り、100kmで走る車に気をつけながら高速道路を渡って、
ガードレールを超え、料金所を目指した。
徒歩だと高速料金を取られるのかなぁという心配をよそに、料金所のおネエちゃんは
「あんたたち車は?」と笑いながら、なんなく料金所を通してくれた。
そこから炎天下の中、歩いてようやく見つけた燕子洞はスゴかった!
さすが AAAA級の世界遺産。
そんなスゴい世界遺産の鍾乳洞の中に、トイレ、休憩所、土産物屋、
そして大食堂、さらにステージまでつくってしまう中国人はもっとスゴい!
確かにあの洞窟の中でライヴをやったら、かなり音は響きそうだが...。
が、ちょっと申し訳なくてトイレは使えなかった。まったくどこに流しているのやら。
燕子洞は一貫している巨大なトンネルになっていて、下には水が溜まっている。
僕らはサイドにつくられた道を歩きながら見学し、
帰りは水の上をドラゴンの形をしたボートに乗って帰る。
そのボートが、テーマパークのアトラクションのようで、これまた奇妙な感じだった。
そんなこんなで鍾乳洞は見終わり、建水まで帰る方法を考えていると
バンに乗ったおっちゃんが話しかけてきた。「建水までなら60元で行くよ」
助かるんだけど、僕らはここまでバスで7元で来ているし、
「まぁ40元くらいにならんか」と粘っていると、またタクシーが現れた。
ビックリしたことによく見るとこのタクシー、
今朝、僕らが宿から建水駅まで行く時に乗ったタクシーだった!
でもこのタクシーの運ちゃん、若いオネーさんなんだが、
今朝、駅まで行く途中に調子良く、僕らにウソを言った。
「燕子洞まで行くバスなんてないよ。私が80元で燕子洞まで乗せてくよ」と。
バスはあったぞ。高速道路で降ろされたけど。
タクシーのオネーさんは「建水まで50元で乗せてくよ」と言う。
すると、バンのおっちゃんも負けずと「それなら40元!」と。
気づいたら30元になっている! オークション状態になったその時、
凄まじいケンマクでオバさんがホウキを振り回しながらぶち切れて登場し、
そのホウキでオネーさんをぶっ叩き始めた! オネーさんに向かって絶叫している!
そうか、亭主の取り値がどんどん下がっているからか!
にしてもスゴいキレかただ!憎しみがこもっている!
オネーさんもしっぽを巻いて逃げ出した。
唖然としていると、いつの間にかそこにいた中国人のカップルが僕らの肩を叩き、
このおっちゃんのバンを4人でシェアしないか、と言ってきた。
僕らも争いごとはイヤなのですぐにOKして、おっちゃんのバンに乗り込んだ。
走り出した車から外を見ると、オバさんはまだオネーさんを追いかけている。こえぇ...!
運転手のおっちゃんは、青い顔をしながら苦笑いでタバコをくわえていた。
あとであのオバはんにこっぴどくおこられるのかなぁ.......なんか、ゴメンネ...。
どうもあのオネーさんはここらをウロウロするやっかいものらしい...。
おっちゃんのバンは建水まで行くのかなと思いきや、予想を反し、
僕らはまた高速のガード横で降ろされた。
そしてビックリすることに、高速の途中にマイクロバスが待っていた。
そうか、駅なのか、このガードレール横は。
かくして僕らはそのバスに乗り、また7元だけ払って、
何か申し訳ない気持ちで、AAAA級の世界遺産をあとにしたのであった。
(リョウスケ)
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